fbpx

電通が目論む「情報銀行」構想の衝撃、個人情報保護よりも「活用」重視の恐ろしさ=岩田昭男

約400社が情報銀行への参入を目論む

現在、400社くらいがこの情報銀行の分野に参入したいと意向を持っているといわれています。その筆頭が日本一の広告代理店・電通です。

電通は昨年、パーソナルデータをひとつのIDに統合管理し、個人および企業の双方にとって有益なマーケティング支援サービスを提供する新会社を設立しています。

その事業内容をもう少し詳しく説明すると、次のようになります。個人が購買履歴や位置情報などを電通の新会社に預け、企業はその個人情報(データ)を利用するごとに、個人に対して報酬やサービスなどの対価を支払う仕組みです。昨年11月以降に企業のキャンペーンやSNSプロモーション、サンプリングなどに活用できる各種サービスを取りそろえ、利便性の高いデータマネジメントサービスの構築を見据えた、大規模な実証実験を計画中です。

つまり電通は、個人から預かった情報をフルに活用しさまざまなサービスを展開しようと考えているわけです。私が言うようなシェルターとして個人情報を守るという意識はまったくないのですが、これが日本における情報銀行のひとつのかたち、モデルであることは間違いありません。

もうひとつこれと対照的なのが、三菱UFJグループ傘下の三菱UFJ信託銀行が発表した情報銀行の事業構想です。その事業構想の核となる新サービスの仮称は「DPRIME(ディープライム)」で、このサービスを支える技術について、すでに国内特許を出願済みとのことです。

新サービスでは、個人が自らの意志でデータを蓄積・管理し、パーソナルデータ提供の対価を受け取ることができるとされ、19年度中のサービス開始をめざしているといわれます。

個人が自らの意志でデータを蓄積・管理し、パーソナルデータの対価を受け取ることができる、というわけですから、当然、データを企業に売るということだと思いますが、その際に個人の同意が必要であり、売買には個人の意思が反映されることになるはずです。

前のめりになる王者「電通」

ほかにもさまざま企業が情報銀行のサービス開始を計画していますが、その基本スタンスは当然ながら金儲けです。電通のほかにも日立製作所や三菱フィナンシャルグループ、イオンフィナンシャルグループなどの名前があがっていますが、いずれも個人情報を守るシェルターではなく、個人情報の活用に重点がおかれています

やはり注目すべきは電通の新事業です。電通といえば日本だけではなく世界有数の広告代理店として知られていますが、現在はネット広告に押されてテレビ広告が不振です。電通といえども、どうやって新分野に進出して儲けを取り戻そうかと必死なのです。

そのため、この情報銀行への取り組みは前のめりになっているといってもいいでしょう。ただ、私は個人情報に対する考え方が、電通の場合は間違っていると思います。

電通は個人情報を石油などの枯渇性のエネルギー資源と同じように、1回使ったらなくなってしまう、消費してしまうものとして位置づけ、高い使用料をとろうとしています。しかし、本来、個人情報は何度でも繰り返し使える再生可能エネルギーと同じように考えるべきです。いわば公共の財産なのです。ですから、使用料などは発生しませんし、有料にするにしても安価なも
のに抑えるべきです。

Next: 個人情報「軽視」の行く末は、格差社会の果てのディストピア

1 2 3 4 5 6 7
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー